味覚の授業
「味覚の授業」®は料理人、パティシエ、生産者らがボランティアで、全国の小学校の3年生から6年生を対象に、味の基本となる4味(「塩味」「酸味」「苦味」「甘味」に加え、第5の味覚である「うまみ」について教え、味覚を意識させ、食の楽しみを学ばせます。
●実施校数 | 全国23都府県 224校 |
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●実施クラス | 509クラス |
●受講児童数 | 12,636名 |
●参加講師数 | 212名 |
2023年度テーマ : 子どもの食の未来
2015年の「国連持続可能な開発サミット」で掲げられたSDGsの精神と行動は、2030年のゴールをめざして着実に続けられており、食のフィールドに限らず、今やそれなくしては成り立たない世界共通事項となっています。「味覚の一週間」®では、人間が食べるということの意味や世界との関連性を、さまざまな活動を通して問いながら、SDGsの精神を活動の要素として取り込んできました。その姿勢をベースに、2023年度はより子どもたちの食の行方を見据えて、参加した人がそれぞれに、近い将来の食を考えるきっかけとなるような「味覚の授業」® 「味覚のアトリエ」の開催を目指しました。
島田進、徹(パティシエ・シマ)各氏@千代田区立富士見小学校
お菓子に不可欠な砂糖をテーマに講義する島田進シェフ。沖縄から取り寄せたサトウキビを見せながら、原料や作り方を説明しました。初めて手にするサトウキビに「固い!」「匂いはしない」など、興味津々の子どもたち。砂糖の原料にはその他にテンサイがあることも学びました。
身近な「お菓子」がデーマとあって、子どもたちの発言も活発。
本物の教材は、常に関心の的。注意深く手渡しながら、順番に観察しました。
最後の試食は2種類のサブレ。「サクサク」
「バターの香り」「塩味も感じる」など、習ったばかりの5味五感をフル可動。1種は卵不使用で、アレルギーの子も含め皆で共に味わうことができました。
カカオポッド(カカオの実)を持参し、チョコレートができるまでを説明する島田徹シェフ。産地やカカオの種類など、プロならではの授業にクラス中が熱心に聞き入りました。
コウケンテツ(料理研究家)、宮本雅彦(トレフミヤモト)、薬師神陸(unis)各氏@千代田区立麹町小学校
世界各地の食事や食文化を巡るコウ氏。
「味覚の一週間」発祥のフランスについても各地方ごとに異なる料理の文化があることを伝えました。実体験に基づく異文化の魅力や、「食べることは自信を作ること」という言葉に聞き入る6年生たち。在日フランス大使館経済部のペルドロー参事官、磯田担当官の授業視察をいただきました。
試食は5味五色を取り入れたキンパ。日本の子どもたちも大好きな一品を、韓国の食文化とともに味わいました。
宮本シェフが試食品として持ち込んだジビエのテリーヌ。原料の猪肉に際して、地球温暖化や環境の破壊、そこからつながる獣害問題に、料理人としてできることだと語るシェフ。食が多くの事象につながっていることを実感する授業となりました。
受講クラスの子どもたちが授業で手掛けた器に宮本シェフも感心。おいしい食事は見た目も大切な要素と語りました。
味わうことの大切さを説く一方で、地球上には飢餓に苦しむ人たちが存在し続けることを話す薬師神シェフ。クラスの人数から割り出された餓死者の数を、真剣に受け止める6年生の表情がありました。授業の後は大使館の方々とともに、この日の特製給食「5味の献立」を試食させていただきました。
うまみの食材は、トマトのコンソメ。試食品は日本のきび糖と煎茶、2種のサブレでした。
ドミニク・コルビ(フレンチ割烹ドミニク・コルビ)、ダヴィッド・ブラン(グランドハイアット 東京)各氏@新宿区立四谷小学校
前週に訪れた徳島県の産品を4味の教材にしたコルビシェフ。ワカメ、スダチ、鳴門金時、シイタケを、それぞれ正体のわからない液体やピュレ状にして用意。五感を頼りに味を探る授業となりました。
タネ明かしとして、徳島食材を紹介しながら、地産地消が大切な理由や、素材の味を尊重することが熱心に語られました。
何も加えないサツマイモだけの濃い甘さ、酸っぱさに清涼感のあるスダチ、シイタケの出汁の凝縮されたうまみ。教室のあちこちから、驚きの声が上がりました。
試食はシェフ特製抹茶のサブレ。
サラミ、自家製レモネード、ダークチョコレート、レーズンで4味を確認したあとには、同じ大きさのキューブが5つ。
貝の出汁、ワイン酢、ゴーヤ、リンゴ、カツオ&昆布の出汁から作る5味5つのゼリーは、見た目にとらわれず「味」だけにフォーカスする、ブランシェフ独自の試食キット。
5味とその感じ方を、舌の図で解説するブランシェフ。これに香りや食感、温度などのバイヤスがかかって「味わう」が成り立つことを説明しました。
山下春幸氏(HAL YAMASHITA)@港区立麻布学校
日本料理人の山下氏は、天然塩をはじめとする素材そのものの味の大切さ、それを集中して味わうことを解説。授業時間に合わせてひいたかつおぶし&昆布の出汁の香りが、教室を満たしました。試食はぜんざい。ここでも塩をひとつまみの効果が立証されました。
在日フランス大使館経済部より、ジラルド衛生・植物衛生担当参事官にご視察いただきました。
奥田透氏(銀座小十)@中央区立月島第二小学校
「和」の文化や事象の衰退を、料理の力で食い止め、未来につなぐことを実践する奥田氏。日本人でありながら、子どもだちにとっても初めて聞くような、日本料理の世界観を披露しました。
2時間引き続きの授業は、前半が講義、後半は出汁から見せる「海老しんじょ椀」のデモンストレーションと試食。
料理は持参のお椀でひとりひとりに配られました。
その味わい深さとともに、四季を反映させた日本の器の文化、また蓋裏までに施された、和のもてなしの心に触れる、貴重な機会となりました。
境智子(エコール・ヴァローナ東京)、菊地賢一(レザネフォール)、マシュー・クラブ(TWO ROOMS)、太田高広(ホテルニューオータニ)各氏@大田区立田園調布小学校
ビスケット、紅茶、ラズベリー、カカオニブ、アーモンド、牛乳のそれぞれの匂いを確かめ、嗅覚が味に及ぼす影響を体験。
さまざまな味や食感、色合いなどの組み合わせが大切なフランスパティスリーを例にとり、「おいしい」を分析した菊地シェフ。トックにあるフランス語の表記、そこにこめられた意味も説明。
子どもたちと丁寧に向き合って授業を進める境シェフ。原料の特徴、製法その味わいの多様さなど身近なチョコレートにまつわるストーリーに、子どもたちも楽しそうな様子。
天然塩、ゆず、菊花弁、ダークチョコレート、ドライケッパーを教材とし、5味に結びつけるクイズ形式のクラブシェフの授業。最後はそれらをひとつのタルトレットに盛り込み、味の組み合わせを体験させました。
<塩・酸・苦・甘・うまみ>と<視・聴・嗅・触・味>と5味五感をひとつずつ順序立てて説明していく太田シェフ。味見の素直な反応や子どもたちとの生き生きとしたやり取りが続きました。最後の試食は子どもたちも大喜びのカヌレ。授業の効果もあって、注意深く味わう姿が教室のそこここに見られました。
永田宏、三井田敦弘(ヨックモック)各氏@中央区立月島第一小学校
カラメルがけしたプチトマトで、一口の5味を提供した永田シェフ。
受講クラス児童のアレルギー状況に応じて、全員が同じものを食べられる試食品を用意する三井田シェフ。フランスガストロノミーで最も大切にされているConvivialité (コンヴィヴィアリテ=卓上の和)を教室でも実践。
間光男氏(TERAKOYA)@東京学芸大学附属小金井小学校
後藤裕一(Equal)、薬師神陸 (unis)、澤村圭介(八芳園)@港区立高輪台小学校
基本の5味の話に加え、乳製品製造過程での廃棄食材を利用した商品の例を取り、実質的なサステナビリティを示す後藤シェフ。おいしい商品が廃棄食材からできている現実に、敏感な反応を示した子どもたちの姿が見られました。
子どもたちにとって、めずらしくはないサブレでも、薬師神シェフの授業の後では、また別の味わい。
澤村シェフの、華やかなパティスリーの話に引き込まれる子どもたち。
ケーキには5味がバランスよく散りばめられていることを知りました。試食は5味を盛り込んだ、デザインさまざまなボンボン・ショコラ。何が当たるか、大騒ぎのひとときとなりました。
杉本雄氏(帝国ホテル東京)@中央区立泰明小学校
日本の食を取り巻くさまざまな問題 – 自給率、天然と養殖 – を、さまざまな形で子どもたちに伝えた杉本シェフ。
鯛のアラから取った出汁を、塩入り / なしで味わうことで、味覚のバランスを実感。
また、天然と養殖の鯛を見比べ、その特徴から見えてくる、日本の食材調達事情を解説しました。
子どもたちは、鯛一尾から、世界につながる日本の食の現状を学びました。
藤野真紀子氏(料理研究家)@学芸大学附属特別支援学校(小学の部)
全員でチョコチップクッキーの実習に挑戦。
焼きたての香りが教室中に広がり、カカオマスで苦味をきかせた焼きたてのクッキーを味わいました。
鈴木麻里氏(樵藤)@森村学園初等部
日本料理の根幹である出汁を、講義と実践の両建てで伝えました。
藤野真紀子(料理研究家)、菊地賢一(レザネフォール)、坂田幹靖(GINZA kansei)各氏@中央区立明正小学校
ブラインドで味を当てる6つのコップには、5味の希釈水に「ハズレ」の水のコップも混ざっていました。騒ぎながらも真剣に味わう子どもたち。答え合わせも、大賑わいでした。
試食品の「5味のマカロン」のイラスト付きレシピもプレゼント。
坂田シェフ – フランス料理人、菊地シェフ – パティシエ の授業のあとには、仕事に関わる話も。
人気の職業につく先生に、子どもたちの積極的な質問が飛びました。
八重洲会のシェフの皆様にもご協力いただきました。
@江戸川区立篠崎小学校
@江戸川区立第三葛西小学校
@佐渡市立畑野小学校
@江戸川区立船堀小学校
@山形県高畠町立二井宿小学校
飯塚善隆(プリンスホテル新潟・長野・群馬 総料理長)
岸義明(ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル 名誉総料理長)
市川博史(京王プラザホテル 名誉総料理長)
伊藤俊幸(元プリンスホテル 総料理長)
齋藤雅巳(元綱町三井倶楽部 取締役調理部長)
森田信夫(東京會舘 シニアアドバイザー)
松山昌樹(ロイヤルパークホテル 総料理長 兼 調理部長)各氏
「味覚の授業」が盛んな愛知県。今年は18校で実施しました。
玉井邦弘氏(名古屋東急ホテル)
@名古屋市立千年小学校
冨田大介氏(パティスリー カルチェ・ラタン)@
名古屋市立玉川小学校
毎年出身校での授業を実施しています。
牧島昭成氏(ソロピッツァ チェザリ)@名古屋市立船方小学校
豊吉宏典氏(ホテルプラザ勝川)@東郷町立諸輪小学校
大鹿裕司氏(ホテルプラザ勝川)@名古屋市立栄小学校
宮崎県では80校で「味覚の授業」が行われました。
県内36名の参加講師のひとり、八田淳氏(Bistroマルハチ)。宮崎市立清武小学校ほか数校を担当。
「味覚の一週間」実行委員長 瀬古篤子が宮崎県知事を訪問、地元メディアの取材も受けました。
島袋司(フレンチレストラン ラトリエ)@嘉手納町立屋良小学校
沖縄の産物を食材にした5味の授業のあと、シェフ持参のブイヨンを教室で仕上げ。立ち上る香りに、鍋をのぞき込む子どもたち。