活動レポート 2017年度

「味覚の授業」®

「味覚の授業」® は料理人、パティシエ、生産者らがボランティアで、全国の小学校の3年生から6年生を対象に、味の基本となる4味(「塩味」「酸味」「苦味」「甘味」に加え、第5の味覚である「うまみ」について教え、味覚を意識させ、食の楽しみを学ばせます。

2017.10.21 台東区立松葉小学校
柳原尚之氏(近茶流嗣家)による「味覚の授業」と調理実習

●参加講師(料理人・生産者など) 320人
●実施校数 239校
●実施クラス 595クラス
●調理実習実施校 82校
●上記のうち調理実習実施クラス 198クラス
●参加生徒数 15,844名

「味覚の授業」® オープンスクール形式で行われた親子授業

台東区立松葉小学校 6年生
柳原尚之氏(近茶流嗣家)による「味覚の授業」® と調理実習

目隠しをして鼻をつまんで味わってみます。

参観に来ていた保護者の方々も熱心に聞き入っていました。

削りたてのかつお節を初めて見る生徒も多く、触ったり、香りを嗅いだりしていました。

実習では出汁をひいてお雑煮を作りました。

ひきたての出汁の香りに歓声が。

和の食材を盛り込んだ五味の味覚キット

新宿区立四谷小学校5年生
吉武広樹氏(元在パリ一ツ星レストラン「Sola」シェフ)、米澤文雄氏(「ジャン-ジョルジュ東京」シェフ)による「味覚の授業」®

吉武シェフの友人である米澤文雄氏(「ジャン-ジョルジュ東京」シェフ)が、スペシャルサポーターとして参加し、合同で授業を行いました。

フランスがどこにあるのかホワイトボードに書いて説明。

吉武シェフのかすかにラベンダーの香りのするクリーム

どんな味がするか五感を使って味わい、 自分の感想を述べあいました。

新宿区立四谷小学校 5年生 風間 泰氏(青山杏亭 店主) による「味覚の授業」®

和食のうま味=出汁のお話を聞きました。

大田区立 田園調布小学校 3年生
太田 高広氏(ホテルニューオータニ東京 西洋料理バンケット統括料理長) による「味覚の授業」®

日野市立 夢が丘小学校 3年生 沓澤 十子氏(調理師) による「味覚の授業」®

「味覚の授業」® 5年生、6年生においては調理実習を実施

中央区立泰明小学校 5年生

中央区立泰明小学校 5年生
田中健一郎氏(帝国ホテル総料理長)/前田謙次郎氏(帝国ホテルシェフ) による調理実習

フレンチトースト作りを体験

フレンチトースト作りを体験

シェフ特製のマカロンも味わいました。

シェフ特製のマカロンも味わいました。

聖心女子学院初等科 5年生
藤野真紀子氏(マキコフーズステュディオ 料理研究家)による「味覚の授業」® と調理実習

オーガニックの味覚キット(ビオセボン・ジャポン株式会社より)

有機食品についての説明をしました。

実習ではチョコチップクッキーを作りました。

タケイファーム 武井敏信氏による朝どり人参の説明と試食

聖心女子学院初等科 5年生
オリヴィエ・ロドリゲス氏(&écléシェフ)による「味覚の授業」® と調理

五味を味わうオリジナルゼリー 出汁のジュレ/サツマイモ/ゴーヤ/ホイップクリームのレモン味/イクラ

ウフアラネージュ作りを体験

中身に何が入っているか味わってから答えを書きました。

  

「味覚の授業」® オープンスクール形式で行われた親子授業

西町インターナショナルスクール 4年生
マシュー・クラブ氏(「ECN Holdings」シェフ)の「味覚の授業」®

シェフオリジナルの五味を味わうキット
甘味…黒酢(京都 )/ うま味…塩昆布 / 酸味…オゼイユ / 苦味…ペンタス、菊、シソの花

酸味のあるハーブ「オゼイユ」や、エディブルフラワーのペンタスなどを豆腐にのせて、一皿の料理として五味を味わいました。

オリジナルの五味の回答用紙

中央区立久松小学校では、オープンスクール形式で行い、「味覚の授業」® がどういうものかを保護者の方々に 知ってもらいました。

ドミニク・コルビ氏(「フレンチ割烹ドミニク・コルビ」シェフ)の授業

塩味…あさりのスープ/うま味…昆布出汁/甘味…紅あずま/酸味…柚子ゼリー/苦味…ビターチョコレート

中嶋 貞治氏(「新宿割烹 中嶋」店主)の授業

植木 将仁氏(「アズール エ マサ・ウエキ」エグゼクティブシェフ)の授業

「味覚の授業」® は日本全国33都道府県で行われました。

奈良県 奈良女子大学付属小学校 堀江純一郎氏(リストランテ イ・ルンガ オーナーシェフ)による「味覚の授業」®と調理実習3~6年生のフードラボとして実施。 5味体験の工夫と地元食材の活用、保護者も聴講しました。

塩味:古代醤、酸味:日の菜のピクルス、甘味:熟し柿、苦味:コーヒー、うま味:だし

シェフ特製5味食べ比べクッキー:ベースの味に、食塩・レモン・砂糖・ビターチョコ・だしを加えてあります。

調理実習では、トマトと大和真菜のパスタ作りました。

静岡県 錦田小学校
遠藤一雄氏(無農薬有機栽培農家生産者)、池田洋一氏(御殿場 和食 農 店主)、長澤 信太郎氏(畑ごはん あぐり 店主)

埼玉県 高州小学校
澤村圭介氏(パティスリーカフェ ミツキ パティシエ)、岩井義郎氏(天冨良 いわ井 店主)

徳島県 海南小学校
ドミニク・コルビ氏(「フレンチ割烹ドミニク・コルビ」シェフ)

宮崎県 宮崎市立 潮見小学校、日南市立 南郷小学校
ヒミ オカジマ氏 (HAKATATONTON NY 燈みやび オーナーシェフ)

京都府 京都市立開睛小学校
北庄司 安則氏 (ホテル セントノーム京都 京料理「山水」料理長)

沖縄県 沖縄アミークスインターナショナル小学校
島袋 司氏(フレンチレストラン ラトリエ オーナーシェフ

山形県 西川小学校
阿部正幸氏(メトロポリタン仙台 総料理長)

「味覚の授業」® 参加校一覧

2017年「味覚の授業」®参加校一覧はこちら(PDF)

「味覚の授業」® の成果

五感を育み、食べる楽しさを伝える~「味覚の一週間」®

「味覚の一週間」®は、フランスで行われてきた27年にも及ぶ味覚教育の活動であり、日本でも平成23(2011)年から同様の取組が始まりました。6年目となる平成28(2016)年は、10月17日から23日までの一週間に、日本各地の小学校やレストラン等において、五感を使って味わうことの大切さや食の楽しみを体感できる様々な取組を展開しました。

活動の中心である「味覚の授業」®は、和・洋・中の料理人や生産者等が講師としてボランティアで小学校を訪れるものであり、平成28(2016)年には約300人の講師が全国189校、約1万4千人の児童に向けて実施しました。以下の要素で構成することを基本としつつ、講師はそれぞれの専門分野や個性をいかした体験型学習を展開しています。

公立大学法人福岡女子大学と連携して「味覚の授業」® の効果を把握するための検証を実施。福岡県篠栗町立北勢門小学校では、平成24年から毎年4年生に「味覚の授業」® をしており、平成27年には「味覚の授業」® 前後に調査を実施。5味識別テスト(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の低濃度溶液と水3、計8検体を識別)の結果、受講前における正答数の最頻値は4、受講後には8(満点)に変化。また、正答数6以上の児童が約2倍に増え、味の識別能力が向上したことがわかった。なお、未実施校(対照校)における4年生の正答数の最頻値は4であり、北勢門小学校(実施校)における「味覚の授業」® 受講前と同様の結果で、受講後の結果との間に有意差が認められた。

「味覚の授業」®の基本構成

  • 五感の働きと5つの基本の味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)を教えること
  • 五感で味わうことによって広がる食の豊かさを教えること
  • 食品の産地や生産方法について情報を伝えること
  • 仲間と「おいしさ」を共有することの楽しさを教えること
  • 講師自身の経験や料理に対する思いを伝え、「食」に興味を持つきっかけを作ること

新宿区立四谷小学校では、5年生の2クラスに向けて「味覚の授業」® を開催しました。始めに5つの味について「しょっぱい食べ物ってどんなものがあるかな?」などとシェフが児童に問いかけながら、味の基本について説明し、児童たちの味に対する興味を引き出します。そして実際に塩、米酢、砂糖、チョコレートの味や香り、食感を確認してもらい、児童たちの味覚を研ぎ澄ませます。
味の基本を学んだ後は、シェフから配られた3種(たまねぎ、レモン、チョコレート)の小さいタルトを、児童たちが目で観察し、香りを嗅ぎ、ゆっくりと噛みしめ、それぞれの味の違いや食材の特徴を五感を使って感じ取っていました。また、児童同士で味の感想を伝え合うことにより、食べる楽しみを広げるのに欠かせない表現力も磨かれます。

続いて次の時間には、フランス料理のシェフが野菜スープの調理実演を行いました。ガスコンロの炎を見ながら火加減をコントロールすること、野菜を炒めたり煮たりする時の香りや音の変化を感じ取ることなど、料理をする時にも五感が大切であることを児童たちに伝えました。

“五感を使ってじっくり味わおう”
シェフによる授業の様子

“料理の時にも五感が大切”
シェフによる調理実演の様子

“「うま味」はどんな食べ物に含まれているかな?”
和食の料理人による授業の様子

また、東京学芸大附属世田谷小学校では、5年生の1クラスと3年生の3クラスに向けて「味覚の授業」®を開催しました。和食の料理人が訪れたクラスでは、教育でかつお削り、出汁をとる実演が行われました。児童たちは、硬いかつお節に触れ、削り節の香りを嗅ぎ、出汁のうま味を味わいました。この授業の中では、食べ物の生産や調理など携わった人に感謝して食べることの大切さも伝えています。

さらに、公立大学法人福岡女子大学と連携して「味覚の授業」® の効果を把握するための調査を行っています。福岡県篠栗町立北勢門小学校では、平成24(2012)年から毎年4年生に「味覚の授業」® を実施しています。平成27(2015)年には「味覚の授業」® 前後に調査を行いました。5味識別テスト(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の低濃度溶液と水3、計8検体を識別)の結果、受講前における正答数の最頻値は4、受講後には8(満点)で、正答数6以上の児童が約2倍に増え、味の識別能力が向上したことがわかりました。なお、隣接する未実施校(対照校)4年生の正答数の最頻値は4であり、北勢門小学校(実施校)における「味覚の授業」® 受講前と同様の結果となり、受講後の結果との間に有意差が認められました。

小学4年生の「味覚の授業」® 受講前後と対照校における5味識別テストの正答数分布

正答数分布

注: 実施校の対象者は「味覚の授業」前後の両調査に参加した98名、対照校は130名。正答数6以上は、受講前26人(26.5%)、受講後55人(56.1%)、対照校45人(34.6%)。

また、北勢門小学校の5・6年生が、4年生の時に受けた「味覚の授業」® 後に変わったと思うことについて調査した結果、嗅覚や味覚、触覚、視覚、聴覚を使うようになったと答えた児童が多く、「味覚の授業」® が五感を使って料理を味わうきっかけになったことがわかりました。また、その他の食行動に関しても、“食に興味を持つようになった”、“一緒に食べることが多くなった”、“会話が増えた”、“手伝いが楽しくなった”など、「味覚の授業」® が食への関心を高め、食行動に好影響を与えたことがわかりました。

「味覚のアトリエ」

学校やパートナー企業のご要望に応えて会期中にさまざまなイベントを実施。
幅広い年齢層の参加者に食の体験を提供。

2017年「味覚のアトリエ」詳細はこちら

味覚の食卓

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